グローバル化が進んでおり、海外赴任をしなければならないという方も多いでしょう。
会社の発展やキャリアアップのために海外赴任は積極的にチャレンジしたい方も多いかもしれません。海外赴任で心配なのは家族のこと、特にお子さんがいるご家庭では、現地での教育をどうするかなど悩むこともあります。
この記事では、子どもを連れて海外赴任することになった際の、学校選びについてご紹介します。
海外赴任時の学校選びについて
海外駐在(在住)時に、子どもに通わせる学校の選択肢は「現地校」「インターナショナルスクール」「日本人学校」です。
日本と同様のカリキュラムで学ぶ「日本人学校」、現地のカリキュラムで学ぶ「現地校」、現地ではない他国の教育システムで学ぶ「インターナショナルスクール」があります。
本記事では、「日本人学校」についてご紹介しています。
▷【海外赴任・海外駐在】子どもの学校に海外現地校(ローカルスクール)ってどう?|第二の母国ができるかも!
▷【海外赴任・海外駐在】子どもの学校どうする?インターナショナルスクール(インター校)という選択肢
学校選ぶポイントについて
学校を選ぶポイントは『学校の特性』や『使用言語』『コスト』『予定滞在期間』また『帰国予定』などについても総合的に判断し、どのような学校にするのかを選ばなければなりません。
こちらの記事で選ぶポイントについて紹介していますので、合わせてご覧ください。
▷【海外赴任・駐在】子どもの学校選びのポイントをご紹介|言語や滞在期間など総合的に判断を!
▷【海外赴任・駐在】子どもの学校の選び方を学年別にご紹介|日本語補習校についてもご紹介
日本人学校とは
日本人学校は海外(国外)に住む日本人子女(日本国籍の子供)を対象に、日本の学習指導要領に沿った教育を行う学校(施設)で、文科省に認定され設立されている全日制の学校です。日本語補習校とは異なり、週5日通う学校です。
日本人学校は、世界49カ国・1地域に95校が設置されており、約1万4千人が学んでいます。
(令和4年4月15日現在)
日本人学校の目的
日本人学校は私立学校で、日本国内の小学校・中学校と同等の教育を確保する目的で設立されており、日本の検定教科書を使用するので日本で学ぶのと変わらない教育が受けられます。日本と同等の教育を受けるため卒業(在籍)すれば日本国内の学校と同じ資格が得られます。
現地の日本人会や在留邦人の運営委員会が日本人学校を設立・運営しており、学校の規模は各国・地域で大きく異なります。教員は、日本の学校と同様に教員資格をもち、文科省からの派遣や現地採用されている選抜された教師で日本人学校採用のための審査に合格しなければならない(人気なため倍率も高い)ため教師の質も良いです。
日本人学校は文科省の認定もあるため帰国時の編入や受験また一般生活などがスムーズに移りやすいです。
私立在外教育施設
先述の通り、一般的な日本人学校は現地の日本人会などが主体となり設立されていますが、
日本国内の学校法人等が母体となって海外に設置している「私立在外教育施設」があります。
私立在外教育施設も全日制の学校で、日本人学校と同様に文科省大臣認定の学校です。
現在、世界に10校もなく令和4年4月15日現在で7校設置されています。
主に高等部が多く、高等部卒業生は日本国内の大学の入学資格を得ることができるため、帰国後の大学入試に対応した授業を行なっています。また、小中高一貫教育や寮制度がある学校もあります。
ただし、費用が高く、学校の数も限られているため、赴任先や経済事情によっては通えないケースも多いため、限られた子どもしか通えない学校です。
日本人学校の特徴
日本国籍があれば入学が認められるため、日本に帰国するまでの期間だけ在学する形が一般的です。
海外に設置されているという特色から英語教育にも力を入れている学校もありますが、日本で暮らすのとほぼ変わらない生活なので、日常的に第二言語は現地校などに通う場合に比べると身につけづらく、帰国後に『帰国子女枠』などを利用して受験する場合は、英語などに苦労する子も多いようです。
日本人学校に外国人の子どもを受け入れ「国際学級」を設けている学校もあります。
国際交流は少なめ
通っているのは日本国籍の子どもなので国際的な交流の機会が少なくなってしまいやすいです。ただし、現地教育や国際的な交流は地域での差が大きく、現地交流行事などを行う学校などもあります。
在住先の言語を学んだり、現地での生活を学ぶことを重視する場合はあまり向いていない学校かもしれませんが、日本に帰ってからの生活を考える場合は、編入や進学なども面を見ても良い選択かもしれません。
高等学校はない
基本的には高等学校がないため、高校まで進学する場合は、日本人学校以外の進学先をまた考えなければなりません(一部の国・地域では高等学校があります)。
そのため、高校進学のタイミングで日本へ帰国する方もいます。
雰囲気や生徒
日本の学校とほとんど変わらないため、日本式の学校のしきたりもあり、文房具や楽器など細かい指定や決まりごともあります。
教員や生徒の雰囲気
先述の通り、日本人学校の教員は選抜され赴任しているため、優秀でモチベーションも高く、日本人学校に通う子どもたちも優秀な子が多いです。これは、海外赴任するくらい親が優秀なためだと考えられます。
加えて、海外にいるという同じ日本人という境遇なため、連帯感が強く、年齢・性別を超えてみんなで仲良くという雰囲気があります。そのためクラスでのいじめなどの問題が発生しにくいと言われています。
また、学校によりますが、1クラスの人数も20〜30人と日本の公立学校と比べると少ないことや、生徒の優秀な子が多いため、日本の学校に比べると少しハイレベルなことを教えている学校もあります。
転入・転出が多い
親の都合で転校が決まるので、数年で日本へ帰国する子どもが多く、転入や転出の頻度が高く、生徒自体も転校に慣れているため、コミュニケーション能力に長けています。
日本人学校へ入る条件
日本人学校には基本的にはいつでも入学できます。
ただし、「日本人会の会員」であるという条件(入学資格)があることがほとんどです。
日本人会の入会資格は「日本人である」なので、日本国籍を保有していなければ日本人学校へ入れないということになります。
ただし、通学区域や通学方法などが条件付けされていることもあるため、日本人学校へ通う際は該当区域への居住をする必要があります。
※通学区域を調べずに入学させようとして、通学区域に該当しておらず引っ越しをしなければならないというケースもあります。
日本人学校を選ぶメリット
日本語での授業・日本ペースの授業
日本人学校の中はほとんど日本です。そのため『日本語が通じる』ということは大きなメリットに感じられます。
また教育のカリキュラムも日本式(日本のペース)で進み、教科書も文科省指定のものなので言語による理解不足の心配もありません。
加えて、日本語学校の先生は海外での教育という特性から、より丁寧な日本語を話すように指導されているため、綺麗な日本語で学ぶことができます。そのため、海外の日本人学校で育った子どもの方が日本で育った子どもよりも正確な日本語を話すと言うケースもよくあります。
日本へ帰国する際も、他のお子さんと学力差がなくスムーズな日本の教育への移行もできます。日本の学校から日本人学校への移行はスムーズで、あまり環境が変わりにくく安心・安定して教育を受けることができます。
特に子どもの頃は、母国語の基盤が作られる大切な時期なので、日本語の力をしっかりと定着させることもできます。
現地言語も学べる
もちろん日本人学校でも、現地語や英語の授業はあります。
海外という環境もあり、現地語や英語の授業にも力を入れている学校が多いです。
また、学校の外に出ると外国語がリスニングできる環境で、自然と現地語に興味を持てる環境となっており、頑張り次第で語学力を伸ばしやすい環境です。
保護者同士や先生と日本語でコミュニケーションが取れる
保護者(親)の立場としても、日本語でコミュニケーションをとれるので大きなメリットです。保護者同士や学校の先生もほとんど日本人なので、日本的なコミュニケーションを取れるので、海外生活に不安な保護者(親)の方も安心感があり、保護者同士の連携も取りやすいです。
また、いじめなどの問題があった際の対応も早く、お互い日本人・日本語同士なので問題解決までも早いです。
教育環境の良さ
日本人学校の全校生徒数は少ないため、1クラスの人数は少ない傾向にあります。
そのため、生徒一人ひとりに手が行き届く手厚い環境なため、より一層質の良い教育を受けられます。
先述の通り日本人学校の教員も教育への意識が高く、通っている生徒も基礎能力(ポテンシャル)が高いので質の良い教育環境になっています。
同級生が日本人・良い雰囲気
日本人学校に通う生徒は、ほとんどが駐在員子女で同じ境遇なので、すぐに仲良くなりやすいです。全校生徒も少ないので、年齢を超えて仲良くなりやすく、お互い助け合って過ごしています。ほとんどの子どもたちが転校生なので、新しく入ってきた転校生を温かく迎え入れてれる雰囲気もあります。
また、日本に帰国する時などの、転校する際も『湿っぽい雰囲気になりにくく』元気に送り出してくれる雰囲気もあります。
送り迎えがある
日本人学校は郊外に設立されている場合が多いため、家やマンションの前まで送り迎えしてくれる学校もあります。安心して通学ができる環境です。
費用が安い
日本人学校は無料ではなく、ある程度の金額がかかります。
ですが、インターナショナル校などに比べると費用はかかりません。また会社からの命令などで駐在の場合は、会社が学校の授業料を負担する場合が多いです。その場合は自己負担はバス代などの交通費などがほとんどとなります。
ストレスが少ない
日本を離れ、海外に住む・環境が変わるということは子どもや家族にとっても少なからずストレスがかかります。
日本語で授業を受けられたりコミュニケーションができたり、保護者としても日本人同士のコミュニティができるなど日本人学校はストレスが少ないです。
日本人学校のデメリット
現地語(英語)に触れる機会が少ない
日本人学校のデメリットとして、まず挙げられるのが『外国語に触れる機会が少ない』です。
日本人学校でも現地語(英語)を学ぶ機会もありますが、現地校やインターナショナルスクールに比べると外国語に触れる機会が少ないです。
また日本人に囲まれた環境なので、外国語を話す機会も限られており、自ら意識して使おうとしない限りは外国語の定着は難しいです。
海外なので耳からの現地語のインプットは多く、リスニング能力は向上できる環境です。そのため、語学スクールに通ったり、地元のスポーツクラブなどに所属したりなどをすれば現地語もある程度身につけられます。
現地語の定着を目指すのであれば、積極的に言葉が定着するような働きかけをする必要があります。
帰国後、帰国子女枠が使えない
帰国後、日本の学校へ編入・進学するときに帰国子女(帰国生)枠が使えないことがあります。
帰国子女(帰国生)枠とは、海外で過ごした子どもを日本の学校へ受け入れる際に配慮をしてくれるという枠です。帰国子女枠(帰国生)枠は「現地校出身」「海外在住年数○年以上」など条件があることもあるので、日本人学校に通っていた場合、帰国子女枠が使えないケースもあります。
PTA仕事など断りにくい
日本人学校の全校生徒は少なく、保護者同士のコミュニティもしっかり組織しているのでPTA役員やPTAの仕事は断りにくいという面があります。
異文化交流が少ない
学校の中はほとんど日本人なので、学校もほとんど日本の学校のような環境です。
学校によっては異文化交流の取り組みをおこなっている学校はありますが、本格的な異文化を超えた交流の機会は少ないです。
給食がない
学校によりますが、日本のように給食がない場合が多いです。
学校によっては弁当屋さんとして連携しているところもあり、注文できる学校もありますが、基本毎日お弁当を用意しなければならないです。
基礎体力や身体能力が落ちる
毎日バス通学となるので、通学する際の徒歩時間がないため基礎体力や身体能力が落ちやすいと言われます。体育の時間以外は体を動かさなくなる子どももいるため、基礎体力や身体能力の心配が出てくることもあります。
学校が遠い
バスに乗って通学しなければならないくらい、日本人学校は郊外にあります。
普段は問題ありませんが、子供の発熱や授業参観などの学校行事の際は保護者(親)も学校へ行くことがあります。郊外にあるため、移動手段の手配など大変なこともあります。
高等学校の部がない
日本人学校のほとんどは小学校〜中学校までしかない場合が多いです。
そのため高校に進学する際は帰国するか、現地のインターナショナル校に入れるかを決めなければなりません。
特に、高校からインターナショナルスクールに通うことは、言語の面でもハードルが高いこともあります。海外赴任の時期、子どもの進路などを考えなければなりません。
こんなご家庭(子ども)におすすめ
日本と同じ環境で教育を受けたい方や、海外滞在期間が短く、すぐに帰国する場合など、日本的な教育を受けたい場合は日本人学校に通うことがおすすめです。
まとめ
ここまで日本人学校についてご紹介しました。
海外赴任は以前よりも一般的で、子供の学校の選択も様々です。
子供たちの意見も聞きながら学校を選ぶことが大切です。また、日本人学校に通う・通わないに限らず、現地の日本人コミュニティを大切にすることも大事です。
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