国際化が当たり前の現代において、海外で働く方も多くいます。そうした中、親の海外赴任のため、海外で生活を送るお子さんも増えています。
しかし、海外赴任の期間を終えると日本へ戻ってくることがほとんどのため、その際、子どもを日本の学校へ『編入』させたり『進学』させる必要があります。 この記事では、帰国子女(帰国生)を持つ保護者の方に向けて、帰国後の進路や、学校選びについてをご紹介します。
帰国子女の定義
「帰国子女」とは、親の仕事の都合などのやむを得ない事情によって海外で暮らし、日本に帰国した子どものことを指します。そのため、留学経験は「帰国子女」とは呼びません。
「帰国子女」は、海外生活が長いことによって、帰国後の生活・教育に適応が難しかったりするものを配慮するという意味合いが大きいです。
帰国子女の編入や進学には「帰国子女(帰国生)枠」というものがありますが、各学校によって海外滞在年数が1年以上や3年以上など「帰国子女」の定義を定めていることがあります。そのため、滞在年数によっては「帰国子女枠」での編入・進学ができない場合もあります。
帰国子女は、なぜ「女」の字がつくのか?
余談ですが、帰国子女に「女」という言葉が使われているため、女性に限定して使われると勘違いされる方もいますが、男性・女性に限らず使われる言葉です。
これは、帰国子女の「子」に息子(男性)、「女」に娘(女性)を表しているためです。現代では、帰国子女という言葉ではなく「帰国生」という言葉を使うことも増えています。
▷帰国子女の帰国後の進路とは?編入する?進学する?インターナショナルスクールの注意点とは
編入か進学かはタイミングで決まる
帰国のタイミングによって、日本の学校に『編入』するか『進学』するかが変わります。
海外赴任に行く時期や、帰国する時期などは会社によっては突然決まることが多く、帰国するタイミングを子どもの成長に合わせてくれることは少ないです。
帰国時にどのような学校に編入するか、または進学するかは、帰国時の悩みの種となるため、よく考えて進路を決める必要があります。
帰国時期を柔軟に決められるなら
先述の通り、帰国時期によって子どもの学習環境が変わります。そのため、帰国時期を柔軟に決められる場合は進学のタイミングなどに注意する必要があります。
例えば、中学受験や高校受験などを考える場合は、受験のための対策期間や願書提出の時期など、良く調べて調整し、帰国する方が良いでしょう。
高校受験を考える場合
高校受験の場合は、その年の3月末までに「海外教育で9年の過程を修了する、または修了見込み」でなければ高校の受験資格(出願資格)が与えられません。 そのため9年の教育課程を修了していなければ、中学3年に編入しなければならないということもあります。
しかし、日本とは違い、海外の入学基準日や学校年度の開始時期は9月スタートが多く、異なる場合が多いです。そのため、多くの場合は中学3年の12月などに編入して中学卒業の資格を得ることがスムーズだと考えられます。
また、海外で9ヵ年の教育課程を修了したタイミングで帰国の場合は、日本の高校の学年はすでに始まっているため編入となりますが、一部の高校は学年途中での編入が認められないこともあるため、一つ下の学年に入学しなけならないこともあります。
ただし、海外の日本人学校は、日本に準じた教育課程で学習するので、日本人学校の中学部を卒業見込みとして、高校受験できることもあります。
※9年生を未修了の場合でも、「中学卒業認定試験」を受けることで高校受験資格を得ることもできます。
こちらの記事で帰国子女の「編入」「進学」についてご紹介していますので、合わせてご覧ください。
▷【帰国子女を持つ親御さま向け】子どもの帰国後の学校選び方や進路について| 帰国生受け入れ校が良い?
▷帰国子女を持つ親御さま必見!帰国後の進学って?|公立・私立・インター校を解説
学校の選び方
編入するにしても、進学するにしても、どのような学校を選ぶのかが大切です。ここからは、帰国子女の学校の選び方をご紹介します。
帰国後の日本の生活・将来をイメージする、子どもと話し合う
帰国時の日本での生活や将来をどうしていくのかをイメージして、学校を選ぶことが大切です。
例えば、英語をもっと勉強したい・日本文化を学びたいなど、どんな学校生活を送りたいかは子どもによって違います。
親心としては、海外での経験や語学力を維持させたいという気持ちもありますが、まずは子どもの話を聞き、日本でどう過ごしたいかを知りましょう。
また、日本での生活をイメージしやすくするために、可能であれば一時帰国で学校を見学するなど、帰国前に日本の学校(生活)のイメージが沸くようなきっかけを与えることも大切です。
通学ができる場所か
学校との距離や通学方法に無理がないかをよく調べることも大切です。
通学距離や通学方法については、帰国後にどこに住むかにも大きく関わる部分ですので、住居の問題と学校の場所については同時に考える必要があります。
適応しやすい環境か
海外での生活が長かったり、海外の学校・インターナショナル校での生活が長かったりする場合は、日本での学校生活や授業などに適応しやすい学校であるかを考えましょう。
帰国子女(帰国生)のためのサポートやフォロー(日本語の補習や教科学習)が充実している学校もあるため、帰国生向けサポート体制が必要だと感じる場合は、事前に下調べが必要です。
スーパーグローバルハイスクール・国際バカロレア認定校
スーパーグローバルハイスクール(SGH)や国際バカロレア認定校などは、グローバルな人材の育成などを主にしている学校もあります。 これらの学校には帰国子女(帰国生)枠が設けられていることも多く、帰国子女の帰国時の入学先としてまず挙がります。入学については、各学校に要件があるので事前に調べておく必要があります。
学力
いざ日本の学校に入った際に授業についていけなかった場合、苦労が大きくなり、精神的に苦痛になってしまうかもしれません。
特に進学校の場合は授業のスピードも早いので、しっかりと検討する必要があります。事前に偏差値を調べておくなど、子どもの学力とマッチしているかの確認が必要です。
どんな校風・特色か
学校にはそれぞれ校風があり、公立に比べて私立学校ほどその校風が色濃く出る傾向があります。校風が子どもに合っているか、また目指したい進路に通じるものかなどは事前によく調べる必要があります。
校風は調べてもなかなか分かりにくいものなので、できることなら入学前に一時帰国をして見学し、子どもに合った学校かどうかを確認しておくと良いでしょう。
その他
その他にも、帰国子女(帰国生)の在籍数・卒業生の進路、・部活動・学校行事などを調べておくことも大切です。帰国時にどのような日常を過ごすのかをイメージしながら、学校選びをすることが大切です。
「帰国生受け入れ校」に通うか「一般校」に通うか
学校の特色にも通ずる話ですが、「帰国生(帰国子女)受け入れ校」と呼ばれる学校があります。入学時や編入学時の試験方法や、入学後の受け入れについて「特別な配慮」をしてくれる学校のことを指します。
帰国生(帰国子女)受け入れ校の特徴
「帰国生受け入れ校」の特徴は、日本語や日本での勉強・生活へ適応できるように補習を行ったりする「日本への適応指導」、外国語力や海外で身につけたスキル・特性をより成長させる「特性や資質の伸長指導」があります。国公立・私立問わず「帰国生受け入れ校」がありますが、受け入れ態勢は地域や学校によって様々です。
注意しておかなければならないのは、「帰国生受け入れ校」だったとしても、入学・編入学時の試験に『帰国子女枠』が設けられているとは限らないという点です。
また、「帰国生受け入れ校」だったとしても、必ずしもサポートと体制が厚いというわけではなく、学校によって様々だということは理解しておかなければなりません。
そのため「帰国生受け入れ校」は一つの学校選びの指針となりますが、「帰国生受け入れ校」でなければならないと固執して考えずに、子どもとマッチする学校であれば「一般校」でも良いと考えておきましょう。
大学の選び方
大学進学のタイミングで帰国するのであれば、「何を学びたいのか」「将来どのような職業に就きたいか」を考慮して大学を選びましょう。
大学によっては、帰国生(帰国子女)向けの入試や外国学校卒業生の入試が実施されています。それ以外にも、総合型選抜(旧AO入試)などを利用して合格を目指すこともできます。総合型選抜では、海外在住経験・Toeflなどの語学資格がアピールポイントとなることが多いです。
また、日本へ帰国して進学するのではなく、海外の学校へ進学するという選択肢もあります。中高生と違い、子ども自身がどうしたいかに耳を傾け、最良の選択ができるような心構えをしておくことが大切かもしれません。
学校の探し方
学校の探し方としては、基本的にインターネットで探すことになりますが、海外でも学校説明会を行なっている学校もあるので、気になる学校の説明会があれば参加しましょう。
また、学校のホームページから資料を取り寄せられることが多いので、積極的に資料を集めて比較をするのが良いでしょう。
親としての心構え
帰国して日本で生活を送ること、そして日本の学校に通うことは、想像以上にギャップを感じ戸惑うことも多いです。慣れない文化の中で生活を強いられるため、ストレスも抱えやすいです。前向きな気持ちで日本での生活ができるように、家庭でもサポートすることが大切です。
また、給食文化や掃除当番のことなど、様々な部分で違いを感じることもあるため、日本の生活や学校文化・環境についてあらかじめ教えておくことなども大切です。
親が日本での生活に戸惑っていたりすると、子どもはすぐに感じ取ってしまい、同調して不安がってしまうこともあるので、肝を据えて構えておくことも大切です。
まとめ
これまで、帰国子女(帰国生)の学校選びについてご紹介してきました。
帰国する際に、どんな学校が合っているかは子ども一人ひとりによって違うため、しっかりと子どもの意見に耳を傾けることが大切です。
親として様々な可能性や選択肢を子どもに用意して、子どもに寄り添い、一緒に考えて選んでいくことが大切です。
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