「帰国子女」ということばを聞いたことがあるでしょうか。これは、親の仕事の都合などで海外で暮らし、日本に帰国した子どもを指します。グローバル化で企業の海外進出も進み、親の海外赴任にともなって海外で生活を送るお子さんも増えています。
しかし、海外で現地の学校に通ったり、日本人学校に通ったりしているお子さんも、いずれは日本へ帰国するときが来ることでしょう。その際の編入・進学先について、まとめてみたいと思います。
a.編入先はどこがいい?
まずは、編入について見ていきましょう。海外赴任は時期が突然決まることが多く、お子さんの進学に合わせて帰国できることは稀ですね。そうすると、帰国してからお子さんをどこかの学校へ編入させなければいけません。その編入先について見ていきましょう。
公立の小中学校
1つ目は、日本で暮らす他のお子さん同様、地元の公立小中学校へ通うという選択肢です。学校によっては帰国子女を支援する制度が整っていることもありますが、通常は特に何の手当てもなく他のお子さんと同じように学校生活を送っていくことになります。
お子さんの海外生活が短かったり、海外でも日本人学校に通っていたりすれば、それほど問題なく日本の学校の生活になじむこともできるでしょう。日本にいたころに通っていた学校にまた通うのであれば、昔のお友達とまた学校生活を送れるかもしれませんね。
しかし、海外生活が長く、一度も日本の学校に通ったことがない、あるいは通っていたけれど昔のことであまり覚えていない、となると、最初は日本の学校生活に慣れるのが大変かもしれません。当たり前ですが海外の現地の学校とは学んでいる内容や進度などが異なりますし、徒歩での通学、給食、掃除、係の仕事、委員会、さらには授業中のマナー(勝手に部屋を出てはいけない、発言は手を挙げてから、・・・)など、勉強以外の面でも初めは慣れるのに苦労するでしょう。加えて、海外に住んでいたという珍しさが好意的に捉えられるばかりではありません。英語の授業中に発音よく英語をしゃべっただけでいじめられる、なんてこともなきにしもあらず。公立中学校に通わせたいと思うのであれば、編入先となる学校がどのような学校かなどを調べてみたり、長期休みなどに一時帰国し体験入学させてみたりすると良いでしょう。もし帰国後の居住先を選べるのであれば、お子さんの学校を居住先選びの基準のひとつに加えてみるのも一つの手だと思います。
また、日本で暮らすようになり家庭でも日本語しか使わない、となると、特に小さいお子さんは海外生活で身に付けた別のことばをどんどん忘れていくといいます。もし言語力を維持したいのであれば、語学教室に通わせたりするなど、使用の機会を絶やさないようにしてあげましょう。
私立の小中学校
2つ目は、私立の小中学校に編入させるという選択肢です。学校によっては学年途中の編入を受け入れている場合もありますので、お住まいになる地域の学校を調べてみると良いでしょう。
ただし、編入にあたって試験を受けなければならなかったり、学校生活を送れる程度の日本語力が必要だったりします。私立ですので、欠員が出なければ入れない、ということもあるでしょう。
しかし、特に帰国子女のための枠や編入制度を設けている学校であれば、お子さんの語学力のケアや未習範囲のフォローなどに力を入れているはずです。
一般枠では入学が難しい学校でも、帰国子女枠であれば入学できるチャンスがあるかもしれませんので、チャレンジしてみるのもいいですね。
ただし、学校にもよりますが、公立と同じように給食や係の仕事などに慣れることは必要でしょう。また、家から遠いと満員電車で通わなければならなかったり、地元にお友達ができにくく、放課後遊びに行く、ということもなかなか難しかったりするかもしれません。費用の面でも、公立の学校とは異なってきますので、そういった面も考慮しながら選ぶと良いでしょう。
インターナショナルスクール
3つ目は、インターナショナルスクールに通うという選択肢です。インターナショナルスクールは上記の2つとまったく異なり、英語が話せなければ入学することは難しいと考えていいでしょう。加えて保護者にも英語力が求められることが多いです。反対にいえば、英語力の維持は確実に行うことができ、将来的に海外で活躍していきたいとなれば大きな力を養うことができます。
海外、特に英語圏で現地校、あるいはインターナショナルスクールに長いこと通っていたのであれば、授業や学校生活は日本の学校に通うよりなじみやすいかもしれません。日本に赴任している外国人のお子さんも多く通っていますので、国語のほかに第二言語としての“日本語”のクラスが設けられていることもあります。
費用に関しては、かなりの額が必要になると考えていいでしょう。
また、注意しなければならないのは、インターナショナルスクールは日本の学校法に定められている学校ではないため、中学校にあたる学年を卒業しても義務教育を修了したとみなされなかったり、高校にあたる学年を卒業しても大検を受けないと大学受験の資格が得られなかったりすることがあることです。学校によっては、日本国籍の児童を受け入れていなかったり、帰国子女でも海外滞在年数が少ないと編入できなかったりするようなので、希望先の条件や卒業の扱いなどを細かく調べる必要があります。
高校は・・・?
高校となると、義務教育ではないため、公立・私立にかかわらず編入試験を受けて編入することになります。
ただし、公立高校で帰国子女を受け入れている学校はあまりないため、私立高校を探すのが良いでしょう。
帰国子女を積極的に受け入れている高校であれば、英語や国語のレベル別授業も実施されていると思います。しかし、公立でも私立でも、基本的には欠員補充という形で募集が行われるため、地域によっては編入すること自体が難しいかもしれません。
常に最新の情報を手に入れて帰国に備えるようにするといいですね。
b.進学にあたっては
さて、次に進学について見てみましょう。運よくお子さんの進学のタイミングに帰国が重なったときはもちろん、帰国してしばらく経っていても帰国子女として進学することが可能なケースがあります。いくつかの進学の選択肢を考えていきます。
公立中学校
お子さんが中学生になるタイミングで、特に私立に入れない、ということであれば、日本で育った他のお子さんと同じように公立中学校へ進学することになります。日本の小学校と中学校では、勉強面(教科ごとに先生が変わる、など)でも、生活面(先輩に丁寧語を使って話さなければならない、など)でもいろいろな違いが出てくるため、事前にそうしたことをお子さんに教えておく必要があります。海外生活が短い、あるいは今後海外に行くことがないということであれば、公立の中学校も選択肢のひとつですね。
私立中学校、中高一貫校、高校
中学生になるお子さんを私立や中高一貫校に入れたい、あるいはお子さんが高校生になる、という場合は、以下のいずれかの方法で受験をしなければなりません。帰国子女として受験しようという場合、学校によっては「滞在3年以上」や「帰国後2年以内」などの条件があることがあります。お子さんがどの枠で受験できるのか、ホームページを見たり問い合わせたりして調べてみるといいでしょう。
ちなみに、高校に入学する場合は中学校を卒業したという証明が必要になりますが、たとえばアメリカなど学年の開始が日本とずれている国の現地校に通っていた場合は、高校入学までに中学を卒業できないことがあります。その場合は早めに帰国して日本の公立中学などに編入したり、日本人学校へ通ったりして卒業の資格を得る必要があります。また、先ほども述べたようにインターナショナルスクールへ編入していた場合も、受験資格があるかどうかを調べる必要があります。
○一般枠で受験○
日本で育ったお子さんと同じ試験を受けて進学する、というケースです。希望する進学先に帰国子女枠がない場合や、海外で生活した年数が少なかったり、帰国してから長い年月が過ぎたりしている場合は、こちらの選択肢を取らざるを得ないこともあります。ライバルは日本で受験勉強をしているお子さんたちですので、帰国してすぐ進学する場合は、海外にいるあいだからしっかり受験勉強をしておかなければなりません。
○帰国生枠で受験○
帰国子女を多く受け入れている学校は、たいてい帰国生枠で受験することが可能です。年数などの条件が当てはまれば、おススメの受験方法です。帰国生枠の受験方法は学校によって異なりますが、英語のエッセーと面接という場合が多いようです。希望先の学校がどのような試験を実施しているかを調べ、それに合わせた対策をとるといいでしょう。同時に、受け入れた帰国生にどのようなケア(補習があるか、日本語のサポートはあるか、など)があるのかなども調べておく必要があります。ちなみに、日本人学校に通っていた場合は帰国生枠で受験できないこともあります。
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○日本人学校枠で受験○
学校によっては帰国生枠とは別に日本人学校枠を設けていることがあります。お子さんが日本人学校に通っているのであれば、こういった枠を設けている学校を探してみるのも一つの手です。試験はどちらかといえば一般枠に近いようですが、5教科ではなく3教科で受験可能、問題は同じだが合格ラインが一般枠より低い、一般枠とは別に人数の枠を設けている、などの違いがあるようです。先ほども述べたように、長い間日本人学校に通っていた場合は帰国生枠で受験できないことがありますので、帰国子女ということを活かして受験に臨みたい、ということであれば、日本人学校枠のある学校を探してみてください。
インターナショナルスクール
これは先ほど編入のところで述べたケースとほぼ同じです。ちなみに、インターナショナルスクールを高校まで通った後の話ですが、ほとんどの学生は海外の大学へ進学するそうです。将来海外の大学を目指そうと思っているなら、インターナショナルスクールは有力な選択肢の1つですね。
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c.細かく情報収集を
さて、帰国子女の編入・進学についてみてきましたが、いかがでしたでしょうか。海外に赴任する際もそうですが、日本に帰国するとなったときにも、様々な不安がつきまとうと思います。滞在予定年数がどんどん伸びたり、あるいは急に半年後に帰国することになったりと、状況がめまぐるしく変わることもあるでしょう。急な帰国に備えて、つねにお子さんの様子を観察し、親子で日本に帰ったらどうしたいか、将来どうしたいかを話し合い、インターネットなどを使って随時細かく情報を収集しておくのがいいですね。そして、日本に帰国したら、逆カルチャーショックのケアや日本の学校生活へ適応するためのサポートなどを欠かさないであげてくださいね。
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